最近、レジ袋の有料化を巡って、否定的な議論が展開されている。その中のひとつに、レジ袋を有料化してもごみの減量にならない、資源の節約にもつながらないという主張がある。実際、各種アンケート調査などでは、「台所の生ごみを入れる袋に」、「ごみ箱の内袋に」、「便利な袋として」利用するという回答が多く、「利用しないで捨てる」という回答は1%にも満たないという結果が出ているという。このような回答の背景には、レジ袋を日頃持ち歩いて再利用してから最後にごみ袋として利用するという、グリーンコンシューマーの知恵も生かされているので、レジ袋は買い物の後でも簡単にはごみとなっていないようだ。さらに、再利用されるレジ袋に代わって新しいごみ袋が使用されると、結局、二酸化炭素の排出量の削減や、資源の節約にならず、いずれ、消費者は経済的負担だけが増えて、環境保全にはつながらないことに気づくというのである。
アンケート調査の結果は、消費者の「もったいない」精神があり、感心させられるが、しかし、買い物のたびに「もらう」わが国で年間約300億枚にも及ぶレジ袋は、必ずしも常に有効に利用されるとは限らないのではないだろうか。というのは、無料と有料のごみ袋の違いは、後者は目的を持って購入するのに対して、前者は「ただ」のものを「可能な限り」利用しようということにポイントがあるからである。実際、ごみ袋はごみを家庭で貯蔵、あるいは回収時に詰め込むという目的で購入するので、回収頻度やごみの量、そしてごみの削減にあわせて一定の容量のごみ袋を購入するので、ごみの容量とは無関係にたまってしまうレジ袋とは自ずと役割が異なる。レジ袋がたまると、少量のごみでもごみ袋として利用することに全く抵抗はない。レジ袋をごみ袋として使用してきた人が、ごみ袋購入派に変わったとき、プラスチック袋の利用量が減ったことに気づくと思うが、いかがであろうか。この種のアンケート調査は行われているのだろうか。
この点は容器包装一般にも通じることである。たとえばペットボトルを水筒に再利用する場合のように、消費者が消費後の容器を有効に再利用することは十分考えられるが、しかし、消費者はペット容器を、目的をもって「購入」したのではない。ペットボトル等の容器は再度、容器としてリユースするのが望ましいことは明らかであろう。レジ袋論争を通じて、環境に配慮する買い物のあり方、消費のあり方を考える機会になるとすれば、買い物を通じて環境意識を育む大事な一歩になるのではなかろうか。
最近、ミートホープによる牛肉偽装等商品・品質の不当表示、再生紙における古紙混入率偽装問題、中国から輸入された冷凍ギョーザの農薬汚染問題など、消費の安全を脅かす問題が頻発している。特にギョーザ中毒事件では、有機リン系殺虫剤の「メタミドホス」が3000ppmを超えて含まれ、ギョーザ1個で人間の致死量となる猛毒であったこと、ギョーザを食した消費者に深刻な被害が生じたことからも、まさに、消費の安全性は危機的な状況と言えよう。
さらに、中国から輸入されている冷凍食品をはじめとする食料品に対する全般的な不安は、日中間における外交問題にまで発展しかねない。日本の食料自給率は、周知のように2006年度で39%と、先進国において最低の水準だが、今回のギョーザ問題は、わが国における食の安全保障に深刻な問題を投げかけた。一般に、食料の安全保障は、米、小麦、大豆などの穀物について議論される場合が多いが、今回のように加工食品が問題の発生源であることを考えると、これまでの考え方を変えねばならない。中国からの農産物の輸入比率は1996年の9%から2006年の13%へと急増しており、他方、中国では危険な農薬が使用されている状況があり、日中で協力して食の安全性を追及していかなくてはならない。一般に、食品の場合、一旦ことが起こると検査体制の整備や消費者の不安などから輸入が停滞する危険性が高い。そして、北京オリンピック開催などを控えた中国政府は、食の安全性について特に神経質になっており、外交問題化しやすい状況となっている。
もっとも、日本の企業は中国に進出して、食料品を生産し、農産物を開発・輸入しており、そのことは日本だけでなく、中国においても食の安全性を促す大きな要因となっている。一方、中国では一般にレタスなどの野菜を生で食べる習慣はそれほど無かったようだが、所得の上昇とともに、新鮮な野菜を食するようになると、人々は包装された食品を購入するようになり、中国における流通体系を変える契機となっているようだ。両国が協力して、食の安全性を確保していく取り組みを進めることが肝要である。
最近になって、新潟に住んでいる義姉から電気製品を買い替えたという知らせを受けた。何でも、70歳を少し過ぎていて一人住まいの上、リウマチを病み手足も不自由ということがあって、現在使っている電気製品が故障した場合も買い物に出かけることができず、かといって修理を頼める先もないことから、冷蔵庫、洗濯機、TV、電話等を一新したというわけである。
義姉が住んでいる所は、郊外に大型店が出来たこともあって中心市街地の空洞化が進み、商店街が衰退して、いわゆるシャッター通り化している典型的な地域である。こうした地域では、車の運転ができない高齢者は買い物も自由にできないということらしい。また、商店街にあった電器店は消滅したので、容易に修理に来てもらうこともできない。さらに、中心市街地の空洞化によってバス便も減少し、旧市内に住む高齢者にとっては病院に出かけるのも困難になっている。新潟特有の雪空を思いつつ、気持ちが滅入る話であった。
そこで、電気製品をすべて買い換えたというわけであるが、結構使える電気製品は一体どうなるのか。リサイクルや中古品として再使用することは可能であろうが、物を大事に使う、あるいは物に愛着を覚え、修理をしながらできるだけ長く利用するという考え方には反するであろう。一方、新製品は省エネ型のものが多いので、環境配慮の点からみれば、買い替える方が良いのかもしれない。
新潟の義姉の話は、地域社会から徐々に疎外されていく高齢者の買い物行動の特徴を示しており、その買い物行動にも環境配慮がどのようにかかわっているかを考えさせられる、少々やるせないものであった。
猛烈な炎暑が始まる直前の2007年6月、東京都は気候変動対策方針を発表した。世界的な大都市・東京が、数値目標を明示して、地球温暖化対策に乗り出した意義は大きい。東京都には産業施設は少ないが、大・中小企業の事業所や民間住宅が密集し、交通混雑も激しく、2005年度の東京都における二酸化炭素の排出量は1990年に比較して約7%も増加している。特に業務部門で33%、家庭部門で約15%増加しており、厳しい現状にある。こうした状況を脱し、世界の環境先進都市づくりを目指そうと、東京都はさまざまな提案を行った。
「カーボンマイナス東京10年プロジェクト」では、2020年までに、東京の温室効果ガスの排出量を2000年比で25%削減するという目標を明示。主に、民間の持つ技術をフルに活用し、「低エネルギー・低CO2型社会」を作るという意欲的な計画を提示している。もともと、東京の1人当たりのCO2排出量は、ロンドンやニューヨークに比較して2−3割ほど低いのであるが、さらに、効率の高いエネルギー設備や機器、LEDなどの照明技術、ハイブリッド自動車に代表される低燃費自動車などの世界に誇る環境技術をフル活用すれば、低エネルギー社会への転換は可能であるという。
再生可能エネルギー分野では、100万Kwの太陽光発電を目指す。これらの環境技術を導入するには多大なイニシャルコストが必要となるが、都は金融機関との連携、地球温暖化対策推進基金の活用、税制などで、コストをまかなうことは可能であると主張する。特に、家庭部門では、「白熱球一掃作戦」、太陽熱温水器の普及、住宅の省エネルギー性能の向上、太陽光発電や高効率給油機の導入などを推進するために、都独自の省エネルギー促進税制の導入を図るとしている。大規模事業者への総量削減の義務化、大企業と中小企業の間での排出量取引制度の導入、中小企業や家庭への省エネ設備設置に対する支援制度など、東京都ならではの金融支援は重要であろう。
交通については、環境技術の役割が重視されているが、自動車交通量を削減する混雑税制度などについては触れられていない。交通を含む大都市におけるライフスタイルの転換を促すことが、もっと主張されるべきであろうが、都の対策方針はグリーンコンシューマーにとっても注目に値するものといえよう。
本格的な夏の到来にあわせて、エアコンによる電力消費量が増える時季となった。クールビズを含めて各種の省エネ活動が家庭や職場で要請されているが、省エネ型のエアコンも話題になっている。今日のエアコンはインバータの導入などによって省エネ化が進んでいるが、特に、ヒートポンプを利用したエアコンは省エネ効果が高く注目を浴びている。
ヒートポンプは、空気熱をくみ上げ、CO2等の冷媒を圧縮・凝縮、そして蒸発させることによって、室内に低温や高温の風を送り出す装置のことであり、特に、高温から給湯するエコキュートが有名である。実際、エネルギー消費効率(COP)を4(2006年のエコキュートモデルではこの値は4.9)とすると、従来の都市ガス・灯油などを利用した給湯器に比較してCO2の排出量を約65%削減することができ、家庭1戸当たりで年間約0.8トンもの排出を抑制することができるという。家庭のエネルギー消費の3分の1は給湯分野であるから、家庭用給湯器の全てをエコキュートにすれば、年間2500万トン、わが国のCO2総排出量の2%削減に相当する。同様に、家庭用エアコンの全てをヒートポンプ型にすれば、COPを6と想定すると、年間約3000万トンのCO2の削減が可能になる。
さらに、業務用の給湯や空調にヒートポンプを導入すれば、民生部門で年間約1億トンのCO2削減が可能になるという。こうした数字は、(財)ヒートポンプ・蓄熱センター編『ヒートポンプ・蓄熱白書』(オーム社、平成19年)で示されているが、冷媒を圧縮するには電力を必要とすること、電力利用における平準化措置(蓄熱方式における夜間割引電力の利用)では原子力発電の拡大を想定していることなど気がかりな点もあるが、太陽光等の再生可能エネルギーの利用も可能なこと、ヒートポンプはこれまでの熱力学の考え方を逆転させるユニークな開発であり、現に即座に導入可能な技術である点などを考慮すると、検討に値するものといえよう。
